連合東京

女性組合員の
利益代表であることを忘れずに

日本労働組合総連合会 副会長
芳野 友子さん

連合君

芳野さんが連合東京に関わるようになったきっかけは何でしたか?

芳野友子さん

芳野さん:当時、私は製造業のJUKI労働組合で中央執行委員を務めていました。連合東京で女性委員会が発足してからは、上部団体のゼンキン連合(現JAM)から委員を送り出していましたが、しばらくして「単組から委員を出したい」という要請がきました。ゼンキン連合の加盟単組で専従役員の女性は全国でも東京でも私しかいなかったために声がかかりました。

連合君

連合東京の女性委員会に入ってみて、どのような印象を受けましたか。

芳野友子さん

芳野さん:とにかくパワフルな女性役員ばかりで驚きました。手帳を開けば会議や学習会でびっしり埋まっているのに、私の手帳はSALEか飲み会(汗)。恥ずかしくて女性役員の前で手帳は開けませんでした。当時、私の会社では結婚・出産退職が当たり前だったのですが、女性委員会には子育ても仕事も組合活動もして…という活発な女性がたくさんいて衝撃を受けました。先輩たちは皆、職場環境や就業実態をきちんと把握し、どうすれば女性の権利が守られ安心して働き続けられるのかと真剣に議論をしていました。私は知識不足で何が問題なのかも理解できず、その議論に参加できないことを恥ずかしく感じ、必死に勉強しましたし、職場の女性の就業環境について実態把握をしました。

連合君

連合東京女性委員会の活動のなかで、一番の思い出は?

芳野友子さん

芳野さん:一番はセクハラ問題に取り組んだことですね。1997年成立の男女雇用機会均等法改正時、セクシュアルハラスメント防止措置が事業主に義務付けられることになりました。連合東京女性委員会は法改正に先駆けてプロジェクトを立ち上げ、休日に集まって勉強会をしたり、職場におけるセクハラの実態を知るため、アンケート調査を実施したりしました。この調査結果はさまざまな労働関係の冊子に掲載され、テレビでも取り上げられました。私たちが行った調査が大変な注目を集め、社会を動かすひとつの原動力になったという経験は強く印象に残っています。ほんとうに皆、良く勉強しました。
また、各級選挙での女性行動も印象に残っています。一人でも多くの女性議員を増やすため、女性組合員が主役となって、女性議員と一緒に街宣行動や練り歩きをしました。この行動で、政治に関心を持ち、政治が身近になったと思います。のちにこの女性行動は、連合本部を動かし、全国の地方連合女性委員会が実施するようになりました。

連合君

2015年に連合の副会長に就任されましたが、連合東京で活動していた頃と比べていかがですか。

芳野友子さん

芳野さん:基本的な役割は変わらないと思いますが、連合本部では政策制度要求の立案がメインになるので、具体的な行動は減りました。連合東京のほうが、集会やセミナーの開催、法改正に関する議員要請、東京都や労働局への要請などなど、運動体として実際に行動することが多かったですね。だからこそ、要請内容の説明ができなければならないし、現場の実態も把握する必要性がありますし、構成組織の特徴も理解しているつもりなので、連合東京での経験は今とても役立っています。

連合君

芳野さんは連合の副会長であるとともに、JAMの副会長、JUKI労働組合の中央執行委員長も務めていて大変お忙しいと思いますが、どのようにプライベートとのバランスを取っているのですか。

芳野友子さん

芳野さん:バランスが取れているかどうかはわかりませんけど(笑)。「やらされている」という感覚だと負担になると思うのですが、私はその時々の課題が明確で、自分の置かれている立場ややるべきことがわかっていて、そこにやりがいを持っているので、あまり大変だとは感じません。あえてバランスを取ろうとも思っていないし、遊びたい時には思いきり遊ぶし飲むし、有休も取る、でも「今やらなきゃ」という時はやる、という感じです。
あとは、応援してくれる人たちの力が大きいですね。がむしゃらにやって「振り向いたら誰も付いてこなかった」ではつらいけれど、連合や構成組織、職場などいろんなところに世代を超えた仲間がいることがとても励みになっています。連合東京女性委員会で鍛えられましたし(笑)。

連合君

連合東京の発足から30年が経過した今、働く女性の環境は大きく変わり、労働組合への女性の参画も増えてきました。芳野さんはどう受け止めていますか?

芳野友子さん

芳野さん:私が連合東京に関わっていた頃の女性役員は、男性のポジションを“奪う”ために、一人ひとりが力をつけようと一生懸命に勉強しリーダーとしての自覚を持ち常に努力していました。「出る杭は打たれる」というけれど、打たれてもへこたれなかったし、上手にかわす人もいましたし、皆で励まし合いました。今は多くの組織が「女性特別枠」を設け、そこに女性を登用するようになっています。その席に座った女性たちが、労働運動の担い手として役員としての質を高めていかなければ、組合員からの信頼は得られません。女性役員は、男女雇用機会均等法など女性を取り巻くさまざまな法律をしっかり学んだうえで、職場の実態をきちんと把握し、女性組合員の利益代表として、課題を解決していく力がなければいけないと思います。

連合君

これからやりたいことを教えてください。

芳野友子さん

芳野さん:人材育成です。女性組合員から信頼される役員を育てたい、きちんと権利を主張できる後輩を育てたいと思っています。自分がかつて先輩たちと一緒に議論したくて頑張ってきたように、今度は自分がリーダーとして後輩たちに「一緒に活動してみたい」「話を聞いてもらいたい」と思ってもらえたらうれしいですね。頼られる先輩にもなりたいです。連合東京女性委員会に関わって苦楽を共にした仲間とは、立場が代わった方もいますが、今も交流しています。

連合君

これからの連合東京を担う人たちにメッセージをお願いします。

芳野友子さん

芳野さん:労働組合の役割は、職場の中で弱い立場に置かれている人たちの権利を守り処遇を改善していくこと。今、最も立場が弱いのは、やはり非正規雇用の女性たちです。非正規の権利を拡充し、処遇を引き上げていかなければ、女性が経済的に自立することは難しいでしょう。東京には単身の女性が非常に多く、なかでも単身高齢女性は劣悪な環境に置かれていると言われます。それを防ぐためには、現役で働いているうちに環境整備をしておく必要があります。そういった問題に気づき、課題を解決していける人材を育てなければと思います。
単組の役員はまず自分たちの企業の労働条件改善がメインになると思いますが、連合の課題は一企業だけではなく社会全体をどう動かしていくか、どういう社会をつくっていくかです。そういう広い視野をもつ人材を増やしたいです。今は社会が複雑になっていますから、組合以外のところでネットワークを広げる力もつけてほしいですね。

インタビューを伺ったメンバーと共に

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