連合東京

大切にしてほしいのは
人と人との“生のつながり”

連合東京 初代事務局長
木村 智佑さん
連合君

連合東京は1989年に結成し、木村さんは初代事務局長に就任されました。どんな思いで結成に携わられましたか。

木村智佑さん

木村さん:「中央の足を引っ張ってはいけない」という気持ちが強かったですね。連合結成時は、元になった4団体(日本労働組合総評議会、全日本労働総同盟、中立労働組合連絡会議、全国産業別労働組合連合)がそれぞれの運動に限界を感じていて、「連合に結集し、新たな展望を開く」という思いが原点にありましたから、連合東京もその流れを逆行させてはならないと思っていました。

連合君

結成当時、印象に残っていることは?

木村智佑さん

木村さん:できたばかりの連合東京を、錚々たる産別の“親分衆”がとても大事にしてくれたことかな。初代の役員は、産別から派遣された方々や、4団体で専従をやっていた方々に担っていただいたわけですが、私なんかが遠く及ばない素晴らしい経歴をお持ちの方ばかりでね。そんな方々が支えてくださったことに、今でも深く感謝しています。

連合君

様々な組織をまとめるのに、ご苦労もされたのではないでしょうか。

木村智佑さん

木村さん:苦労したことは、もうあんまり覚えてないですね(笑)。でも、連合東京には大きな期待と関心が集まっていて、産別同士がいい意味で対抗意識を燃やしていましたよ。
昨日までライバルとして闘っていた者同士が、連合東京の執行委員会では同じテーブルにつくわけですからね。私たちは座る場所にだって気を配らなくちゃいけない。前の方に座った人が偉いのか、なんて話も出てきますから。そういう問題を避けるため、円テーブルにしようかという話まで出ましたよ。今では笑い話ですが、当時はそんなことも真剣に考えていました。

連合君

木村さんが2001年に退任されるまでの中で、一番印象に残っている出来事は何ですか?

木村智佑さん

木村さん:いろんな思い出がありますけど、一番と言われるとやはり結成直後の「連合型選挙」ですね。
当時、中央の山岸会長の掛け声に応じて、連合東京でも野党の皆さん方の協力を得て参議院選挙や東京都知事選挙に取り組んでいました。できたばかりの地域組織の皆さんが総力をあげて戦った、その盛り上がりの中にいた私は、「組合が世の中を動かしているんだ」なんてこともちょっぴり感じたものです。
また、連合東京結成直後に起こった阪神・淡路大震災も強く印象に残っています。発生から一週間後に支援チームと一緒に神戸に赴き、最も被害の多かった地区を案内していただきました。私は戦争を経験していないので、360度の焼け野原を見たのはあの時が初めてです。終戦直後の東京もこんな状況だったのだろうかと考えました。あの光景は今でも目に焼き付いています。

連合君

退任されてから15年が経ちますが、連合東京の運動を外から見て、どう感じていますか。

木村智佑さん

木村さん:今の現役の皆さんは非常に苦労しているなと、つくづく感じます。長くなるから具体的なことは言いませんが、私は、今のような社会を後輩の皆さん方に残してしまったことに対して、反省と後悔の念をもっています。
ご存知のように、今の日本は、もう待ったなしの改革を迫られています。なのに、長期にわたって経済が低迷し、その改革を実行するための社会的な体力が著しく減少しています。これがせめて30~40年前であったなら、もう少し日本にも基礎体力が残っていたはず。その時代に思い切った改革を提起・実行できなかった私たち世代の罪は重いでしょう。私などは「A級戦犯」というほどトップの人間ではありませんが、「B級戦犯」くらいには値すると思っています。

連合君

退任後の今、改めて、リーダーの役割とは何だと思いますか。

木村智佑さん

木村さん:リーダーは、その時その時の組合員の要求に応えて汗を流すことも必要です。しかし、最も大切なのは、たとえ一時的な反発があっても20年後・30年後を予測した改革を提起することではないしょうか。
と、かっこいいことを言いましたけど、今もし私が生まれかわったとしても、そのようなリーダーにはとてもなれないと断言できます(笑)。

連合君

それでも、ご自分は組合活動に向いていたと感じますか。

木村智佑さん

木村さん:そうですね。組合員の方々から見れば不謹慎な言い方になるかもしれませんが、私の人生は組合活動のおかげで非常におもしろおかしく、楽しいものになりました。多くの人たちと交流できたり、国内外の様々な土地へ行かせていただいたりと、職場で仕事をしているだけでは経験できないことだらけで、とっても刺激がありましたよ。

連合君

これから組合活動をやってみたいという人たちにメッセージをお願いします。

木村智佑さん

木村さん:労働組合の使命だとか、人の役に立つことをしようとか、そんなきれいごとの話をするつもりはありません。もっと単純に、「労働組合の活動をすること、労働組合の役員になること、労働組合の専従になること、それって結構おもしろいよ」と言いたいです。
組合活動の中では、たくさんの人との出会い、交流があります。それは職場で黙々と仕事をしているよりもずっと刺激的でおもしろいことなんです。ただ、もちろん本人の心がけにもよるけどね。せっかく労働組合に入っても、そのおもしろさを活かしきれないような働き方をしてたらだめですよ。
組合は人と人とのつながり。最近はネット上でしか人とつながれない人が増えてきているように思いますが、それは本当の友人関係と言えるのか疑問です。人間関係の本当のおもしろさは、生で向き合ってこそわかるもの。時代は変わっても、労働組合はずっと“生のつながり”を実感できる場であってほしいですね。

インタビューを伺ったメンバーと共に

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