連合東京

労働者には労働組合が必要!
組合づくりにかけた思い

ものづくり労働組合 JAM 
組織化推進局長
古山 修さん

連合君

長年、組合づくりに携わってきた古山さんは、組合にはどんなきっかけでかかわるようになったのでしょうか。

古山修さん

古山さん:ベトナム戦争で亡くなる同世代の若者をどうにか助けたいと思い、学生運動ではデモばかりしていました。それから大学をやめて入った中小企業で労働組合をつくろうとしたら解雇と言われ、撤回させるために会社と6年間、戦いました。結果、会社都合退職しましたが、その6年間の組合づくりの経験が原点です。若さや勢いで突っ走るのではなく、真の弱者への支援活動こそが重要だと痛感しました。それから、港区内の労働組合を束ねる港区労協で、組合づくりや対労基署交渉などを担当した後、区労協は解散し、同時に連合東京に入局しました。中部地協(現在は中南ブロック地協)で、多くの労働組合の立ち上げ、組織化に携わりました。

連合君

組合づくりを専門に活動してこられたのはなぜですか。

古山修さん

古山さん:相談の過程で組合結成に踏み込めず自死した人も見てきました。救えなかった人が家族に宛てた遺書を読んだら泣けてきました。組合があれば困っている人を救えます。消費者金融のアコムや、下着メーカー・シャルレユニオンとシャルレ代理店ユニオン、ソクハイ、YMSスガナミ、日本製紙系の組織化など多くの組合づくりを進め、タクシー会社の組織化ではバリケードストライキもしました。本人と仲間、家族を助ける活動をしていたら、人と人がどんどんつながり、労働組合を作りたいという相談がたえません。組合をつくっていくと、労働者が自信を持って生き生きと働くようになることが、組織化を進めるにあたりとても嬉しいことです。

連合君

組織化を進めるうえで心がけていることは何ですか。

古山修さん

古山さん:労働組合は、会社の健全な対抗勢力として存在するべきです。良好な労使関係を築くには、何よりも信頼関係が大切で、信頼の構築には、会社と本音で向き合えるかでしょう。相手に対しリスペクトし筋を通せば、相手もこちらに配慮します。すると友人関係と何ら変わらない良い労使関係を築くことができるはずです。組織化では、まず自立した組織にすること。肝心な会社との交渉を組合員が専従スタッフに頼る代行主義ではなく、組合員各自が自律、自主運営するのが本来の在り方です。東急セキュリティでは、当初は個別で交渉を進め、ゼロ地点から労働組合設立まで7年間を要しました。会社はその動きにまったく気づかず、驚いていましたが、組合員主体の自律的な運営で、結成から4年後には、春闘に向けた学習会も行うようになりました。また、労働組合には、女性の参加も必須です。準備会設立でも老若男女のバランスに配慮し、女性を必ず入れます。すると話の深まり方がまったく変わります。本当に困っている非正規の人たちや労働組合のない会社に勤めている人々に響く活動をいかに楽しんでできるかです。本人が組合活動を楽しんでこそ、難しい説得も可能になります。

連合君

かつて所属していた連合東京に、今後、期待することは何でしょうか。

古山修さん

古山さん:未組織の人を組織化へ巻き込むことを絶対に諦めないでください。権利ばかり主張せず、泥まみれになって、楽観主義におもねらず、ギリギリに追い詰められながらも戦略を考え、動いてもらいたいですね。組織化には本気の実践経験が必要で、組織化に取り組む産別は限られています。産別へ高いアンテナを張り、情報発信を強化したらどうでしょうか。組織化に加え、団体交渉での切り込みにも、相手の弱点を見極めた戦略が重要です。構成組織では、組合づくりができる人材の育成が急務です。

連合君

現在はどんなことに取り組まれていますか。

古山修さん

古山さん:今はJAM(機械、電機、自動車、車両、精密機器、アルミサッシ、鋳鍛造、鉄鋼、住宅関連機器産業を中心とする産業別労働組合)に所属し、中小企業の組織化に取り組んでいます。個人事業主やフリーランスなどの非正規で働く人と外国人の労働者も活動の対象であり、組織の社会的責任に関する国際規格ISO26000にも登場する「非標準的雇用」「雇用類似契約」がテーマとなります。「非標準的雇用」とは、一時的雇用、パートやアルバイト、派遣労働者、従属的自営を含めた働き方を指します。「雇用類似契約」とは、雇用と自営業の中間的概念を指します。これらの働き方についてILO(国際労働機関)は、働きがいのある人間らしい仕事(ディーセントワーク)が欠如していると指摘しています。このような労働者を救っていくために、組織化に取り組んでいます。

連合君

次の世代へのメッセージをお願いします。

古山修さん

古山さん:人生で労働は常に必要で、1日の3分の1以上を過ごす職場の環境を整えることから社会人の人生は始まります。生きることや働くことは「哲学」です。組織化を実現するには、貪欲に勉強することが大前提となります。なぜなら勉強していなければ、人の心はつかめないからです。私自身も未だに人に教えることより、人から教わることの方が多いくらいです。
ドイツの哲学者ハンナ・アーレントとフランスの哲学者アランの言葉をエールとして贈ります。

「失敗が提供するのは、楽々とまっすぐに滑り落ちていく緩やかな坂道。
成功の道はいばらだらけで、苦労するしかない」

-ハンナ・アーレント(1906.10.14 - 1975.12.4)

「幸せになるには、期待感を持つことだ」
-アラン(本名:エミール=オーギュスト・シャルティエ 1868.3.3-1951.6.2)

失敗することも多いですが、目の前に壁があっても諦めずに明るく、悩んでいる人や困っている人たちへ手を差し伸べることで、他の誰にも代われない存在となっていってください。幸福が笑顔を作るのではなく、笑顔が幸福を作るのです。笑顔は伝播します。そうすれば組織化は成功します。

インタビューを伺ったメンバーと共に

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