ジャパンビジネスラボ事件の判決に対する見解について

掲載日:2021年1月26日

連合東京

事務局長 斉藤 千秋

 

 ジャパンビジネスラボ事件は、連合東京加盟の連合ユニオン東京の組合員が一審原告として起こした裁判で、育児休業取得後に正社員から契約社員となり、その1年後に雇止めになった事件である。一審では一部勝訴していたものの、2020年11月28日の高裁判決は一審の判決を覆すものであり、最高裁に上告するも棄却されたことにより、2020年12月8日敗訴が確定した事件である。

 

 本裁判の争点は、育児休業明けに保育園に入園できず、休業前と同様に正社員として働くことが困難であろうということから、契約社員としての復帰を勧められ、「本人が希望する場合は正社員への契約再変更が前提」と記述された制度説明文書を交付された。労働者について、①その後保育園入園が決まり、すぐに、正社員復帰を希望したにも関わらず、正社員復帰が認められなかったことが正当だったか、また、②正社員に復帰できずに契約期間(1年)が経過した後、雇止めとなったことが正当であったかであった。

 

 「希望する場合は、正社員への契約再変更が前提」とした制度説明文書を交付しているにもかかわらず正社員になれなかったという事実は、育児休業から復帰する労働者の不安を助長するものであり、自らが説明した契約の内容を反故にするものであり、いかなる理由があろうともゆるされることではない。そして、経営者は、上記文言を前提とする契約に基づき、労働者の正社員への登用に努めなくてはいけない。

 また、契約期間満了とともに雇止めとなった背景には、組合員が労働組合に加入したことが強く影響していると考える。ジャパンビジネスラボは、原告が育児休業中に前社長が交代し、創業者の配偶者が引継ぐ形で現社長が経営を行い、社風が変わりつつある中、原告が労働組合に加入し活動したことを、新たな経営体制では許容できなかったと考えられる。また、代表者とのやりとり等を証拠化するための執務室での録音行為等を就業規則違反とし、原告を雇止めとした。会議録作成のための録音は許されるにもかかわらず、弱い立場にある労働者が、必要に応じて、使用者との面談等を録音することが許されないのであれば、今後のハラスメント等の事実確認を行うことに大きな影響をきたすことになる。社内の録音が就業規則違反として取り扱われるのであれば、労働組合として就業規則の変更を求めていかなくてはいけない。

 

 本裁判の判決は確定したが、雇止めが労働組合に加盟したことによる不当労働行為にあたらないか、中央労働委員会で審査中である。連合東京として、その経過を見守りつつ、育児休業取得者が、安心して職場復帰できる社会づくりに向け、加盟組織の労使交渉を支援するとともに、政策制度の実現により保育施設の充実を求めていく。