連合東京

誰一人取り残さない
立場を超え、本気で実現

SDGs市民社会ネットワーク 理事・事務局長
新田 英理子さん

連合君

今、注目されているSDGs(Sustainable Development Goals:持続可能な開発目標)について教えて下さい。

新田英理子さん

新田さん:途上国の貧困解消を目指した2001年に採択されたMDGs(ミレニアム開発目標)に続くSDGsは、2015年9月25日、国連全加盟国193カ国が採択した国際目標です。正しくは、全94節からなる宣言文(アジェンダ)「我々の世界を変革する:持続可能な開発のための2030アジェンダ」のことで、「誰一人取り残さない」との理念で、貧困や格差をなくし、持続可能に支え合う社会を次世代にも引き継ぐことを実現する具体策として、17のゴールと169のターゲット、230の指標を設けています。

連合君

SDGs市民社会ネットワーク(以下、SDGsジャパン)はどんな活動をしていますか?

新田英理子さん

新田さん:私たちは一般社団法人で、約110の団体が環境や開発、教育、ジェンダーなど、13のユニットで集うネットワーク組織です。国際協力NGOに加え、国内活動が中心のNPOも参画し、活動の幅は広がりつつあります。ただ国内のNPO法人はおよそ5万団体あり、まだまだ私たち自身が知られていません。SDGsジャパンでは主に、SDGs達成のための政策提言や生活者視点からのSDGsの普及啓発をしています。一人ひとりが尊厳をもって生きられる社会になるよう、市民社会の立場で、民間企業や自治体、国際機関、政府など、幅広いセクターと連携しながら活動しています。

連合君

日本政府のSDGs政策を新田さんはどう評価しますか?

新田英理子さん

新田さん:日本政府は2016年12月に実施指針を定めています。日本が取り組むべき8つの優先課題と具体的施策を付表として掲げています。ただその実施指針の存在自体がほどんど知られていません。経済規模が世界第3位の日本のSDGs達成ランキングは、2016年11位、2017年と2018年が15位です。政府は「日本型SDGsモデルで世界の国・人づくりに貢献する」と言っているので、世界に資するには、日本は、特にSDGsの評価が低い、⑤ジェンダーや⑧成長・雇用の達成に向けた大胆な政策展開が重要ですね。NPO・NGOや有識者、民間セクター、労働界など多様なメンバーで構成汁「SDGs推進円卓会議」も設置されているので、政府と私たちの立場は異なっても、共通の目標を達成する同志です。互いのリソースを持ち寄り、達成に向けて本気で議論する必要があると思います。

連合君

先進的に取り組む国や地域はどこですか?

新田英理子さん

新田さん:北欧やドイツの政府は、SDGs以前から、持続可能性に基づいて施策を作っているので進んでいます。ドイツは経済もサステナビリティに回そうとの意識ですべての政策ができているそうです。日本の施策は「経済発展」に覆われすぎて、格差を生みやすいですよね。市民社会の立場での活動は、韓国などアジアでも盛んです。世界的には「自由の制限」が課題で、SDGsジャパンでも「市民社会スペースの縮小傾向にあるのでは」と懸念しています。

連合君

連合も推進し、企業や自治体、議員など、様々な人々がSDGsのバッジを付けています。活動を根付かせるために、どんな広報活動をしていますか?

新田英理子さん

新田さん:SDGsの活動は、真ん丸じゃなく凸凹でいいとのメッセージをこのオリジナル会員バッジに込めています。素材は、日本では1~2%しか流通していない、薬品で洗浄していない「人・環境・社会にやさしい皮」です。国際目標として世界中の合意を優先すると、どうしても妥協せざるを得ない部分が出てきますが、私たちは会員の障害者支援を行う団体の方たちと1年かけてこのバッジを作りました。一例ですが、ストーリー性のある広報活動を心がけています。

連合君

新田さんがSDGsジャパンに関わるようになった経緯や、連合との出会いを教えていただけますか?

新田英理子さん

新田さん:大学卒業後、企業で3年半働き、その後、日本NPOセンターの職員を20年しました。NPOの存在が社会をより豊かにすると伝えていく全国組織で仕事をしながら、SDGsジャパンへの出向が2年ほど続き、2019年4月から専属で活動しています。連合とは、日本NPOセンター在籍時から連携してきました。組合という共通の基盤をもっているので、先駆的な取り組みにパッと取り組むよりは、全体として、方針がきまったら、1つの動きにまとまっていくのは、NPOには難しいので、それぞれの特性が相乗効果を生むと、例えば災害支援での連携などは、とても良いのではないかと思います。連合は働くことを基盤にしていますが、「暮らしを良くしよう」とする活動への思いは共通ですよね。

連合君

仕事で大切にしている思いや、活動の原動力は何ですか?

新田英理子さん

新田さん:青臭いですが、本気でSDGsを達成したいと願っているのです。2030年にSDGsが達成しようとしている「誰一人取り残さない社会」は、「みんなが本当に意識すればできる」と言える側にいたい。誰でも良い時、悪い時があり、働けなくなり、人を恨み、傷つけることもあります。でもそれを乗り越えるために、対話し、コミュニケーションする側にいようと思います。夢物語と言われることもありますが、本気でやろうとしているので、すごく厳しいことだとの自覚もあります。ただ日々、本当に厳しい状況にある人たちと向き合い、不条理なことを諦めず、変えようとしている人たちと活動をずっと共にしてきたので、信じるかどうかじゃなく、「やるんだよね」という感じです。

連合君

労働組合とNGO・NPOは今後、どう連携や協力をしていけば良いでしょうか?

新田英理子さん

新田さん:きっかけは何でもよくて、一緒に何かをすることが大事です。どうやるべきかより、まずは何か一緒にできることを探したら良いんじゃないでしょうか。労働組合には仲間がいて、銀行や保険などの金融機関もあり、リソースがそろっています。わざわざ外部と組まなくても、自分たちの中で完結していたんですね。一方、私たちは、足りないものだらけですが、基金の寄付先として、助成金をいただくことがよくあります。今後は、組合内でまかなうだけでなく、社会的にもっと広めて貢献しようとすれば、NGO・NPOとの距離をさらに縮めるチャンスができるのではないでしょうか。

連合君

今後、新田さんが最も取り組みたいことはなんでしょうか?

新田英理子さん

新田さん:経験値や感覚値と組み合わせたベーシックな調査研究をしっかりやりたいです。例えば、ギャンブルとホームレスの関係性は高いですが、研究する人がいないから、証明するデータもありません。また、日本は識字率100%と言われるけれど、小学生の頃からひきこもり、日本人でも漢字を読めない、書けない子の存在がクローズアップされ始め、20年ぶりに識字率の調査がされるそうです。SDGsをブームでおわらせないためには、もっとSDGsの目標と既存のデータや研究をもととした、現状とのギャップ特定が重要です。政策提言にはデータも大切なので、SDGs達成のためにぜひ、いろいろな方たちと連携し、知見も共有しあって、達成をめざしたいです。

インタビューを伺ったメンバーと共に

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