連合東京オリパラ委員会メンバーが、素人目線ながら競技のルールや魅力、注目選手をご紹介します。各種競技をみんなで応援しよう!
競技名
アーチェリー
緊張感と解放感がとりこに! スリリングな心の格闘技
競技概要
一般的なリカーブ、または滑車付きで半分の力で矢を放てるコンパウンドのボウ(弓)で的を狙って矢を放ち、得点を競います。四肢の障がいで車いすを使う「W1」とリカーブ、コンパウンドの3種目を男女の個人戦と男女ペアのチーム戦の計6種目でメダルを争います。障がいの種類や程度に応じて用具を工夫することも認められています。
競技の魅力:非日常の緊張感と解放感
競技は屋外で行われ、雨や風、ちょっとした雑念が結果に重大な影響を与えるため、選手は常に平常心を保つメンタルの強さが求められます。選手がボウ(弓)を構えると会場中の視線が矢の先端に集まり、独特の緊張感に包まれ、緊張が最高潮に達した瞬間、時速200km近い速さで矢が放たれます。矢が的に命中した瞬間、解放感と共に、それまで空気の張り詰めていた会場から感嘆のため息や拍手が起きます。そんな日常では味わえない緊張感と解放感がパラアーチェリーの魅力のひとつです。
イチオシの日本人選手
上山
友裕
さん
所属:三菱電機 種目名: リカーブ
日本を代表するパラアーチャー
高校でアーチェリーに出会い、関西大学リーグなどで活躍しました。社会人1年目の2010年冬に原因不明の両下肢機能障がいで足がまひした後もアーチェリーを続け、2011年秋に国内のパラ大会に初出場で2位に。現在、国内では常に上位に入り、日本を代表するパラアーチャーです。2016年のリオパラリンピックは初出場でリカーブ7位に入賞しました。東京パラリンピックでは個人戦とチーム戦でメダルを狙っているそうです。
超絶プラス思考の
チャレンジ精神
自身の強みを「超絶プラス思考。相手が満点でも動じず、『次のエンドで勝てばいいんだ』と切り替えられるところ」と語る超ポジティブな性格や障がいをハンデとせず、常に前向きに競技に臨む姿勢に共感します。また、「自分にとってのスポーツとは?」との質問に「尽きることのない目標。目標はいくつかあり、その中の1つをクリアしてもまたすぐに次の目標が見つかる。目標がなくなった時が引退のときだと思っている」と、常に次へチャレンジしていく姿勢に、自分自身も見習いたいと感じました。
競技へのメッセージ
パラアーチェリーは「世界最古のパラスポーツ」といわれています。一方で、障がいがあっても狙いやすいように工夫した弓を使うなど、知れば知るほど奥深い側面もあります。50m・70m先の的を射るため、並外れた集中力を必要とする「心の格闘技」とも言われるパラアーチェリーを皆さんで堪能しましょう!!
全労金
持ち前の超絶プラス思考で、リオ大会リカーブ7位入賞のさらに上をいく、東京大会ではメダル獲得に向けて頑張れ!上山選手!!!
競技名
陸上競技 トラック
多様な選手がシンプルな速さで勝敗を競う
競技概要
100m・200m・400m・800m・1500m・5000mと100mを4人でつなぐリレーなど多彩です。障がいの種類・程度・運動機能に応じて27クラスに分かれ、隣り合うクラスを合わせた統合クラス「コンバインド」も行われます。競技のクラスはアルファベットのTと2桁の数字を組み合わせて表記し、10の位は障がいの種類、1の位が小さいほど重度の障がいを意味します。
競技の魅力:健常者よりスピーディーな展開も
オリンピックと異なり、2レーンを使ってガイドと一緒に参加する視覚障がい者の選手など、さまざまなタイプの競技者がいて、対象とする障がいの内容などで条件をできる限り揃えた公平なレースを実施しています。障がいの特性に合わせた義足や、高速で走れるように開発された車いすなどを使い、競技によっては健常者よりスピーディーなレース展開も期待できます。また一人ひとりが特性に合わせたトレーニングを重ねて鍛え上げた肉体の美しさも圧巻です。
イチオシの日本人選手
多川
知希
さん
所属:東京電力(組合員)
種目:T47クラス 100m、200m、4×100mリレー
過去3大会連続出場のトラックのレジェンド
生まれつき右前腕部が短い障がいをお持ちです。中学で陸上部に入るなど、陸上競技の経験は長いものの、当時はすごく足が速いわけではなく、投てきの選手だったそうです。大学生になってから本格的にパラリンピックの陸上競技を始め、短距離に転向しました。北京、ロンドン、リオデジャネイロと3大会に連続出場しています。東京2020大会を支援する部署に所属し、フルタイムで仕事をしながら競技と両立している努力家です。
努力家&情熱的な姿でファンを魅了
陸上競技に対して誠実に向き合っていると感じます。仕事もフルタイムでこなしながら、競技の練習も行い、長年にわたり競技を続けていることは本当に大変な事だと思いますが、つらそうな表情や弱音を吐く様子を見たことがありません。2016年リオデジャネイロ大会において、銅メダルを獲得した際のエピソードを講演会で聴きました。「最後まで諦めなければチャンスは必ず来るし、諦めないことが大切だ」と熱く語る姿に、たくさんのファンを魅了しています。
競技へのメッセージ
パラリンピック陸上競技のトラックは障がいの種類や程度は多様ですが、どのクラスでも走る速さを競うシンプルさが魅力です。それぞれの選手の陸上哲学や特性を活かすための練習などを知って、障がいによる困難を克服し、競技に向き合う美しい姿をぜひ楽しみながら応援してください!!
東京都電力総連
パラリンピックに興味を持ったきっかけは、同じ組合で懸命に努力を続ける多川選手の存在を知ったからです。仕事のみならず走る姿に感動・勇気をもらっている仲間と一緒に応援しています!!
競技名
陸上競技 フィールド
走幅跳・こん棒投・円盤投・やり投・砲丸投。多様な選手が挑む多彩な種目の違いを楽しんで
競技概要
跳躍は車いすを除く全クラス、投てきは全障がいクラスが実施対象です。中でもパラ独自の『こん棒投げ』は、車いすクラスでも重度で、握力がなく握れないなど、手にも障がいのある選手のために考案されました。ボウリングのピンに似た長さ約40cm、397gのこん棒を投げます。投げ方に制限はなく、前向きでも後ろ向きに投げてもいいルールです。
競技の魅力:真っ暗闇で恐怖を乗り越える選手に共感
跳躍のT11(全盲など)の選手は、見え方の違いによる公平性を保つため、アイマスクを必ず付けます。真っ暗な中で頼りになるのは、走る方向や踏切地点を伝えるコーラーと呼ばれる補助者の手拍子や声だけ。助走路をできる限りまっすぐ、思いっきり駆け抜け、「今だ!」と信じた場所で踏み切り、空中へ——恐怖を克服する相当な勇気が必要です。義足の着用義務はなく、ホッピングと呼ばれる片足跳びも認められています。投てきでは車いすの選手は助走せず、座ったまま上半身の力だけで投げます。
イチオシの日本人選手
兎澤
朋美
さん
所属:富士通
種目:T63 走り幅跳び
東京開催決定で競技へ本格参画、2019年世界大会の銅メダリスト
小学5年生で骨肉腫を発症し、左足を失います。パラサイクリングに取り組んだ後、日本体育大の日本財団パラアスリート奨学制度で入学し、東京オリパラの開催が決まり、本格的に陸上競技を始めました。実力をどんどん上げ、2018年の日本選手権でアジア新記録をマーク。同年のアジアパラ競技大会と2019年の世界パラ陸上競技選手権の走り幅跳びで銅メダルを、2019年世界パラ陸上競技選手権大会ではT63の100mでも6位を獲得しています。
自身の日本&アジア記録を何度も更新中
10歳で左太ももを切断という苦難に直面し、数年間は障がいに前向きになれなかったものの、リオ大会の日本人選手の活躍に、自分もパラ陸上選手になろうと目標を立て、本格的に陸上に取り組んで、すぐに実績を出していることがすごいと思います。2021年4月のジャパンパラ陸上競技大会ではT63 走り幅跳びで自身のアジア記録を12cm更新し、リオ大会4位の前川楓選手に30cm以上の差をつけて優勝しました。常に挑戦し続ける姿勢で、ぜひ東京大会でも記録更新を狙ってほしいです。
競技へのメッセージ
陸上のフィールド競技は多彩な競技が楽しめます。同じモデルの義足でも、選手自身に反発力を受け止める筋力や技量が必要です。T11クラスの全盲などの選手がコーラーと日々の練習で培った信頼関係から生まれる声掛け、手をたたき続けるのか、歩数に応じて数を数えるのかなど、違いを見比べながら、ぜひ皆さんも応援しましょう。
連合東京
初めてのパラリンピック出場、おめでとうございます! 女子100mも制するスプリント力を助走に活かした走り幅跳びの記録更新も期待していますが、ぜひ思いっきり楽しんでほしいです。
競技名
陸上競技 マラソン
共通コースを超人級の精神力や体力で挑戦
競技概要
東京大会で3競技クラス5種目が走る42.195kmはすべて同じコースです。視覚障がいの全盲のT11は、アシスタントの「ガイドランナー」と一緒に走り、重度弱視のT12はガイドランナーと走るか、単独で走るかを選びます。上肢切断・上肢機能障がいは通常のマラソンに近いものの、腕が不自由な分、給水コップやスポンジを取りやすいよう工夫しています。
競技の魅力:見えない怖さやバランスを取る困難を乗り越えて爆走
視覚障がいはガイドランナーと長さ50cmまでの「テザー」(ガイドロープ)のみを頼りに、見えない状態で走り、恐怖との戦いです。上肢切断・上肢機能障がいは、バランスを取る難しさがあります。競技用に開発された車いすは平均30km/h、下り坂で50km/hに達します。カーボンやマグネシウム素材でできており、30万円から90万円と高価。「走る」より「漕ぐ」と表現し、まさに陸上のボートレースのようです。世界記録は男子が1時間20分14秒、女子が日本の土田和歌子選手の1時間38分07秒と、超人が行う迫力があります。
イチオシの日本人選手
道下
美里
さん
所属:三井住友海上
種目:T12 視覚障がいマラソン
小柄だけど世界記録を更新中!
小4で角膜の病気を患い、中2のときに右目の視力を失いました。その後、左目の視力も低下し、26歳で盲学校に入ってからダイエットをきっかけに走り始めたそうです。それが今や世界記録保持者に。それも144cmと非常に小柄です。さらに驚いたのは7年前の2014年に世界記録を樹立後、2度も更新していること。2016年リオ大会では銀メダルを、2019年の世界選手権では金メダルを取得しています。
ステキな笑顔と素直な心
活躍に期待大
テレビで拝見しましたが、本当につらく厳しいレースの後なのかと思わせるほど、素敵な笑顔で応対する姿に感激しました。お会いしたことはありませんが、ガイドランナーに全幅の信頼を寄せる素直な心をお持ちだからこそ、好記録が生まれるんだと思います。2020年12月の防府読売マラソンでも2時間54分13秒をマークし、世界記録を保持しているので、東京大会でも活躍を期待しています。
競技へのメッセージ
安全な場所で目隠しをして走ってみると、視覚障がいがありながら走ることへの恐怖を感じます。レース用の車いすに乗ったこともありますが、本当に1時間以上も漕ぐことができるのか?! と、考えただけで腕がつりそうです。この競技を行う方々は「選手」というよりも、もはや「超人」だと思います。
連合東京
自国で開催されるパラリンピックは想像を絶するほどのプレッシャーが掛かると思いますが、メダルにとらわれず、ぜひ楽しんで下さい!
競技名
バドミントン
鋭い感覚と技術の習熟度、メンタルが問われる総合競技
競技概要
今回の東京パラリンピックで初めて正式競技になりました。シングルス、ダブルスともに、座ってプレーする車いす(2ランク)と立位でプレーする4ランクがあり、低身長の人のクラスも含まれます。ネットの高さなどのルールは一般のバドミントンと同じですが、車いすのカテゴリーはコートの面積を半分に変更し、攻撃のテンポが速くなります。
競技の魅力:注目選手の活躍とダイナミックな動きや作戦が見どころ
オリンピックでは桃田選手やダブルスのナガ・マツペアなどが注目されていますが、実はパラバドミントンも、日本人のメダル候補が複数います。車いすで世界ランク1位の里見紗季奈選手や山崎悠麻選手。そのほかに立位の鈴木亜弥子選手も有力です。車いすはできるだけ最小限の動きで後方にのけぞるように打つため、ほとんど背もたれがない車いすを使います。のけぞって打った直後に体勢を立て直す場面が見どころです。また義足の選手もバランスを保って打ちますが、どこに打つかの作戦も勝敗を左右します。
イチオシの日本人選手
里見
紗季奈
さん
所属:NTT都市開発
種目:WH1(車いす)
日本を背負うパラバドミントンの女王
高3だった2016年に交通事故で脊髄を損傷。両下肢に障がいが残りました。中学生時代はバドミントン部だったため、パラバドミントンの日本代表選手が主宰するクラブへ行き、最初は趣味として車いすバドミントンを始めました。2017年8月のデビュー戦でシングルス3位、同年12月の日本選手権では準優勝。2018年の国際大会でタイへ初めて海外遠征し、日本のエースの山崎悠麻選手とダブルスで優勝。2019年、2020年と日本選手権を連覇しています。
控えめな選手が金メダルを狙うアスリートに成長
もともとは控えめな性格の里見選手。スポーツ頑張る系は「キャラじゃない」「恥ずかしい」と思っていたそうですが、お父さんの後押しで車の免許を取得し、日本代表の村山浩さんのクラブで毎日練習できるようになりました。2019年に女子ダブルスで優勝したときも「そんなに注目しなくていいのに」「ストイックじゃないし、普通の人だから恥ずかしい」と思っていたのが、東京大会では単複共に優勝を狙い、今ではすっかりアスリートの風格に。東京大会の間にも成長してくれると期待しています。
競技へのメッセージ
大量の点差があっという間にひっくり返る展開もバドミントンの魅力です。車いすの勢いを計算し、たったひと漕ぎでいかにシャトルの落下点に入るか、同時にスイングの体勢をとり、配球を読む力も求められるなど、選手同士の鋭い感覚と技術の習熟度、メンタルの強さが問われる試合を存分に楽しみたいと思います!
連合東京
女性誌の取材では、実はこっそりネイルを楽しむ女性らしい一面も紹介されていました。23歳の若さと負けず嫌いな強さを活かして、ぜひシングルスでもダブルスでも世界を圧倒してほしいです!
競技名
ボッチャ
緊迫感と静寂の中で競うテクニックと戦術
競技概要
シングル、ペア、チームで競います。先攻がジャックボール(目標球)を投げ、先攻、後攻と順に1球を投げた後、ジャックボールから遠い方が球を投げます。6球投げ終えたら、相手よりジャックボールに近い球を各1点で集計。これを1エンドとして、シングル・ペアは4エンド、チームは6エンドで1試合とします。合計点が多い方が勝ちです。
競技の魅力:シンプルなルールに白熱の展開
275g、直径8.6cmの羊革製のボールを投げて、目標球への近さを競うシンプルなルール。集中力やきめ細やかなテクニックが必要です。会場は緊張感と静寂に包まれ、ボールを確実に目標球へ寄せるため、空気を抜いたりクリームで柔らかさを調整したり、どの場面でどの素材のボールを使うかは戦術次第。終盤にはボールを投げ入れる範囲がかなり狭くなり、より繊細なテクニックが勝敗を分けます。また、ジャックボールから一番遠い側から投げていく戦法もあり、最後まで緊張感ある試合展開が多いです。
イチオシの日本人選手
藤井
友里子
さん
所属:アイザック
種目:BC1(脳原性疾患)
「自分にもできる」と手ごたえ、前回大会は準優勝
生後10カ月ではしかから脳性まひとなり、手足に重度の障がいが残ります。28歳だった2000年、身体障がい者団体が開催するスポーツ交流会でボッチャ教室の指導者に声をかけられ、輪投げやダーツ、卓球もボウリングもうまくいかなかった中で「自分にもできる」と手ごたえを感じてボッチャを始めます。2002年のBC2クラスに初参戦し、翌年に初優勝。2005年にBC1へ転向。2016年リオ大会の団体銀メダルメンバー、2018年日本選手権で優勝しています。
控えめな選手が金メダルを狙うアスリートに成長
車いす操作ができず、四肢・体幹に重度のまひがあるBC1クラス。2012年ロンドン大会、2016年リオ大会に続き、3大会連続で出場となるベテラン選手です。世界ランキング19位は女性で最上位。2021年5月に実施された強化合宿では、日本代表の村上光輝監督も藤井選手を「向上心があり、投球精度、コントロールが抜群に上がっている」と評価しています。競技アシスタントを務めるお母さんの孝子さん、チームの仲間との絶妙な連携で、前回の銀メダルを上回る金メダルの獲得を狙っています。
競技へのメッセージ
一定の用具は必要ですが、単純明快なルールで、誰でも楽しめるスポーツです。私もやってみたことがありますが、昔懐かしい「石けり」を思い出しました。弾まず転がりにくいボールは、表面の縫い目で軌道が変わるため、ボール一つひとつの癖を見極めるのも選手の力量だといわれます。集中して観戦していると選手たちの緊迫感が伝わってくるはずです。
情報労連東京
ボッチャを「生きがい」と語る藤井選手。経験豊富で、富山県魚津市でもパラリンピック代表内定時に市役所などに懸垂幕を掲げ、熱烈に応援されています。東京大会でも活躍に期待しています。
競技名
カヌー
水際のスピード勝負に東京大会から新種目追加
競技概要
2016年リオ大会で初実施された、下肢障がいなど肢体不自由者のための競技。200mの直線コースでスプリントを競います。水をとらえるブレードが両側についたパドルを左右交互にくるくる回しながら漕ぐ「カヤック」と、安定感を補うアウトリガー(浮き具)付きのカヌーに乗り、パドルで左右どちらか一方を漕ぎ続ける「ヴァー」の2種目です。
競技の魅力:卓越したパワーとバランス感覚駆使したスピーディーな展開
鍛え抜かれた上半身でパドルを漕いで、バランスをとりながら水面を進む短距離決選は迫力満点。障がいに合わせて座面を工夫するなどした艇を使います。パドルでいかに水をとらえ、スピードにどう乗るかが勝負を分けます。東京大会から新たにヴァー種目が追加されました。重度のL1からL2、軽度のL3と3クラスに分かれ、L3ではわずか40秒でフィニッシュラインを通過。下肢障がいのためパドリングだけで進む方向を決め、卓越したパワーとバランス感覚を駆使したスピーディーな展開に魅了されます。
イチオシの日本人選手
瀬立
モニカ
さん
所属:江東区カヌー協会/筑波大学
種目:KL1(カヤック L1)
東京の下町生まれ、前回大会から躍進中
東京下町の江東区に生まれ、区立中学校のカヌー部に所属。国体をめざすも高1体育の授業で事故に遭い、両下肢まひとなりました。リハビリを経て、高2で競技に復帰して以来、パラカヌー選手として世界をめざし、競技歴1年で世界選手権に初出場し9位に。2016年リオ大会で8位、2019年世界選手権では5位に躍進。
成長速度は世界1、強力なバックアップも
「ウェイトトレーニングで鍛えた肩の筋肉が自慢!」と本人が言う通り、強いストロークが持ち味。2017年のワールドカップ第2戦はKL1 2位、同年の第3戦は1位、2019年の世界選手権はKL1 5位と着実に結果を出しています。リオ大会でトップとの差は10秒433でしたが、2017年7秒628、2018年5秒010、2019年には2秒94と僅差に。「成長スピードは世界一」を自負し、瀬立選手をバックアップするチーム・モニカではシートの改良にも力を入れ、ずっと2人で暮らしてきたお母さんの後押しも得て、メダルを狙います。
競技へのメッセージ
力強いパドリング、時速18kmにもなる圧倒的なスピード感。先端がシャープで艇の幅が細い競技用カヌーは、スピードが出る反面、バランスをとるのが至難の業。水面をすべるように突き進み、ゴール前ではデッドヒートを繰り広げる、スリル満点の競技をぜひ皆さんも楽しんでください。
連合東京 東部ブロック地協
東京パラリンピックの会場も瀬立選手が育った江東区です! 地元で金メダルをぜひ獲得してもらえたらと思います。パラカヌー期待の超新星、瀬立モニカ選手をみんなで応援しましょう!
競技名
自転車競技
さまざまな選手・自転車が集う全50種目
競技概要
競技用走路を走るトラックと一般道で行うロードがあり、タイムトライアル、パシュートと種目別で実施。障がいによって自転車を使い分け、四肢障がい(C、競技用二輪自転車)、下半身不随(H、手で漕ぐハンドバイク)、脳性まひ(T、3輪自転車)、視覚障がい(B、2人乗りのタンデム自転車で視覚障がいのない選手と一緒に)の4クラス。50種目が行われます。
競技の魅力:タイム加算やBクラスのパイロットとの連動に注目
基本的に速さが勝負ですが、パラリンピック競技ならではの特徴は計測タイム制です。同じクラスでも障がいの度合いが違う選手が競い、実測タイムにそれぞれの障がいの度合いを考慮して計算しタイムを加算し、順位を決めます。2人乗りのタンデム車は前の席に視覚に障がいのないパイロットが乗り、ペダルは前後連動しているため、後ろに乗る視覚障がい者の選手はパイロットが踏むペダルのリズムに合わせて足を動かし、ハンドル操作に合わせて身体を左右に傾ける必要があり、以心伝心の一体感が問われる競技です。
イチオシの日本人選手
杉浦
佳子
さん
所属:楽天ソシオビジネス
種目:C2
「治らない」大けがから最優秀選手賞受賞へ
2016年、45歳で趣味として自転車に乗り始め、2度目に参加したアマチュアの自転車大会で転倒。脳挫傷、外傷性くも膜下出血、頭蓋骨や鎖骨の粉砕骨折で、医師には「治らない」と言われるほど大ケガに。記憶が途切れる高次脳機能障がいと右半身のまひが残りました。リハビリで出会ったパラ自転車競技を翌年から始め、同年の世界選手権タイムトライアルで優勝。2018年も世界選手権を含む主要大会で8戦7勝を修め、最優秀選手賞を受賞しました。
息を忘れるほどの集中力と素直さ
障がいの特性から、走りに集中すると疲労感を得にくいのが強さの秘密です。ただレースに集中しすぎて呼吸することを忘れてしまうことも。コーチから言われた通りに戦える「素直さ」を強みと自負し、事故の恐怖を思い出すのではとの不安を克服するため、あえて怖さを感じる場所でトレーニングを重ねてきた強靭なメンタルの持ち主。加齢によるモチベーション低下を懸念し、パラリンピックで勝つために「努力と根性と若さ」を掲げていますが、経験を活かしたレース展開で間違いなく今大会を盛り上げるでしょう。
競技へのメッセージ
パラ自転車競技はいろいろなタイプの自転車が一斉に集う絶好の機会でもあります。選手だけでなく、自転車を作り上げたチームメンバーの思いも感じながら応援するとより楽しめるでしょう!
航空連合東京
50歳という年齢で20代の選手と競うことを不安だと思われているようですが、今までのレース経験と代表に選ばれた実力を信じて、何より大会を楽しんでもらえたらと注目しています!
競技名
馬術
正確さや美しさを競う、パラ唯一の採点競技
競技概要
「馬場馬術(ドレッサージュ)」は、パラ競技で唯一、歩き方の正確さや動きの美しさをフィギュアスケートのように採点で競います。クラスごとに指定の競技課目がある「個人」、選手3名が障がいクラスオープンで競う「団体」、個人課目上位者が音楽に合わせて競う「自由演技」とあり、障がいの種類や程度に応じた5クラスに分かれ、男女混合で全11種目。
競技の魅力:選手と馬の華麗なコンビネーション
静寂の中、人馬が指定の課目を順にこなす個人はまるでコンパスのように正確な円を描き、選手と馬の華麗なコンビネーションが見どころです。1歩ずつ歩く常歩(なみあし)、2拍子で歩く速歩(はやあし)、3拍子の駈歩(かけあし)の歩き方や正確さを10点満点で採点し、合計得点率で順位が決まります。視覚障がい者には位置を声で知らせるコーラー、記憶障がい者には馬場外からコースを伝えるコマンダーがつき、アシスタントとの連携も重要です。選手と馬の心を通わせた演技に魅せられます。
イチオシの日本人選手
鎮守
美奈
さん
所属:コカ・コーラボトラーズジャパン
ベネフィット/明石乗馬協会
種目:個人課目(グレードⅠ)
フルタイムで働きながら国内トップ選手として活躍
先天性の脳性まひで、高校生のときに障がい児用施設でセラピー馬と出会い、馬に乗り始めます。27歳で競技馬術を本格的に始め、2004年アテネ大会に出場しました。フルタイムで働きつつ、世界選手権などの国際大会に出場し、国内トップ選手として活躍してきました。アテネ大会以降はパラリンピックから遠ざかっていましたが、2017年に東京大会への挑戦を決め、2018年、飲料メーカーにアスリート社員として入社しています。
挫折も経験しながら再チャレンジ
小さな体で障がいの最も重いグレードⅠに出場しています。探求心や集中力、気力は人一倍。限界はないと感じさせてくれる素晴らしい選手です。アテネ大会は競技2日前の練習中に2度落馬し、当日も馬の状態を読めないほど緊張してトラウマに。しばらく国際大会への出場をやめたそうです。健常者の大会と同時開催が始まった2010年頃から国際大会へ再び進出し、多くの競技選手を育てた名手から牝馬を借り、世界選手権でも好成績を収めるように。
競技へのメッセージ
どんな障がいの選手が馬に乗っているかに注目してください。視覚障がいの選手もいますし、障がいの程度によって、座面を改良したり、力の弱い手足にゴムを装着したり、各選手とチームが工夫を施し、安定した演技につなげています。静寂の中で行われる人馬一体の演技やアシスタントとのコンビネーションも見どころです。
連合東京 中南ブロック地協
17年ぶりの東京大会で再び最高の演技を披露してもらえると期待しています!
競技名
5人制サッカー
声や音を頼りに驚きの駆け引きを展開
競技概要
視覚障がいの選手がプレーできるように考案された5人制サッカーです。欧州や南米で広まり、2004年アテネ大会から正式競技となりました。アイマスクをつけて、音と声でコミュニケーションをとります。フットサルと同じ広さのコートで、フィールドプレーヤー(FP)4名とゴールキーパー(GK)、監督、ガイドとなるコーラーの計7人でチームを組みます。
競技の魅力:見えない中でのスーパープレーに無言で熱く声援
視覚をアイマスクで閉じた選手たちは仲間が指示する声や転がすとシャカシャカ鳴るボールの音を頼りに、自身やボールの位置を把握します。周囲の動きを想像しつつ、力強いシュートや連係プレーを展開し、試合はまるで見えているかのようなスーパープレーの連続です。GKとの駆け引きは想像を絶するやり取りで、思わず感嘆の声を挙げてしまいそうに。しかしそこは選手の邪魔にならないようにぐっとこらえて、静寂の中で見守ります。コロナ禍以前から胸の内で熱く声援を送るのが鉄則のスポーツです。
イチオシの日本人選手
川村
怜
さん
所属:アクサ生命保険/
パペレシアル品川 ポジション:FP
8年前から日本代表チームをけん引するエース
1989年、東大阪市出身。5歳で目の病気を発症。2年後に頭を強打して網膜はく離となり、視力が低下。中高時代は陸上競技に打ち込み、18歳でブラインドサッカーを始めます。2013年に全盲となりました。同年のさいたま市ノーマライゼーションカップで日本代表デビュー。2014年仁川アジアパラ競技大会の銀メダル獲得に貢献し、2015年から日本代表のキャプテンに。2021年6月の国際大会でもゴールを決めてチームの準優勝に寄与しています。
陸上で鍛えた運動量と変幻自在なシュートが強みのストライカー
切り返しの鋭さとゴール前での決定力はピカイチ。陸上競技で鍛えた脚力、体幹トレーニングで養った豊富な運動量、スピードに乗ったドリブルと変幻自在で精度の高いシュートにファンの多い日本のエースストライカーです。2013年の日本代表デビュー戦では前年のロンドン大会王者のブラジルから初ゴールを奪いました。リオ大会では出場権を逃し、力不足を感じるも、日本代表の上林知民コーチと個別トレーニングを積み、東京大会ではなんと金メダル獲得と世界一の選手になる目標を掲げているそうです。
競技へのメッセージ
世界ランキングはトップがアルゼンチン、2位ブラジル、3位スペインで日本は12位(2021年1月時点)。総当たりのグループリーグと決勝トーナメントが予定されており、川村選手も「特にアルゼンチンには勝たないとメダル獲得は難しい。勝ちきれる力をつけて東京大会に臨みたい」と語っており、注目しています。
連合東京 西北ブロック地協
上林コーチが「1人で展開を変え、試合をコントロールできる存在」「チーム全体を見られる」と評価する日本代表の主将として、ぜひ健闘して、メダル争いに絡んでほしいです。
競技名
ゴールボール
緊迫感と白熱の展開を無言で見守る
競技概要
選手が目隠しとなるアイシェードを付け、鈴の入ったボールを転がすように投げ合い、相手ゴールにボールを入れて得点を競う競技です。コートはバレーボールと同じ広さで、各チーム3人の選手が攻撃と守備を繰り返します。試合時間は前後半各12分。
競技の魅力:音を消した移動や全身でボールを受け止めるハードな攻防
選手は自分の聴覚(音)と触覚を頼りに競技するため、応援する側も静かに集中して見守ります。音を消した移動攻撃、味方の声を頼りにしたパス交換など、多彩な攻撃が展開されます。音と感覚でボールのある位置を判断する選手の感覚の鋭さと、選手たちの緊張感が観戦している私たちにも伝わり、攻守が入れ替わる展開も含めて、ハラハラドキドキの連続です。守る側も攻めるチームの足音のかすかな音を聞き分け、力いっぱい投げられたボールを全身で受け止める、かなりハードな印象です。
イチオシの日本人選手
浦田
理恵
さん
所属:総合メディカル/九州なでしこ
ポジション:センター
アテネ大会をテレビ観戦し、2年後に国際デビューした大ベテラン
1977年熊本県出身。20歳の頃に両目の視力が急激に低下。網膜色素変性症と診断されます。左目の視力はなく、右目も視野が98%欠損し、強いコントラストのものしか判別できないそうです。2004年アテネ大会でゴールボール女子日本代表の活躍をテレビで知り、競技を始めました。2006年世界選手権で国際デビュー。2008年北京大会でパラリンピックに初出場。2012年ロンドン大会は日本の守備の要として活躍し、金メダルを獲得。2016年リオ大会は5位でした。
40半ばでも経験値や感覚的成長でどん欲にプレー
相手やボールの動きを読むサーチ力を武器に、女子日本代表を引っ張ってきました。「ブラインド状態なので配慮して伝えないと裏目に出る」「逆に細かく言いすぎてしまうと問題が起きることもある」「選手でかわす言葉は戦術とモチベーションを半々で」とコミュニケーションの繊細な対応がチームの信頼感にもつながっているようです。40半ばに差し掛かっても経験値や感覚的な能力の向上がウェイトを占めるゴールボールでは「年齢は関係ない」とどん欲にプレーする姿が観客にも感動を与えます。
競技へのメッセージ
第二次世界大戦で視覚障がいとなった傷痍軍人のリハビリとして考案されたのをきっかけに、競技にまで発展した背景には、私たちの想像を超える選手たちの努力が垣間見えます。私も連合東京のイベントで体験し、音だけでボールを追う難しさを実感しました。得点が入れば勝負に関係なく、両チームに拍手を送りたいです。
連合東京
「見えないからミスしてもいいわけできない。自分と正面から向き合うしかない」と語る誠実さや「見えないから音に気づける。そこで見えるものがある」と語るポジティブなプレーを楽しみにしています!
競技名
柔道
組み合った状態から激しい攻防
競技概要
視覚障がい者の競技として、健常者の柔道とルールはほとんど変わりませんが、両者が互いに組んでから主審が「はじめ」と合図を宣告して試合がスタートするのが最大の特徴です。離れたら試合開始の位置で組み直し、常に組んだ状態で戦うため、体力を激しく消耗します。体重別の男子7階級、女子6階級で、全盲や弱視など、障がいの程度が異なる選手の対戦もあります。
競技の魅力:接近した技の応酬、残り数秒で大逆転勝利も
最初の組み手を争わず、けん制し合うことがないため、開始直後から技をかけ合う激しい攻防が見られます。「はじめ」の合図から、いかに組み合った状態を崩すかが勝負のカギです。接近戦での技の応酬は壮絶で見応えたっぷり。4分間の試合は一瞬たりとも目を離せません。残り数秒でも組み合って戦うため、大逆転勝利もあり得るのはパラリンピックならではの見どころです。男子は1988年ソウル大会から、女子は2004年アテネ大会から正式競技となり、日本男子は毎大会でメダルを獲得しています。
イチオシの日本人選手
工藤
博子
さん
所属:ユナイトアンドグロウ
階級:63kg(B3クラス)
15年のブランクでも国内大会優勝!
出生時に低体重のため、未熟児網膜症に。中学生当時の「ヤワラちゃんブーム」に触発され、友人と柔道部を設立します。高校でも健常者に交じり競技を続けたものの、高校卒業を機に引退しました。高校の同級生だった仲元歩美さん(現在は工藤選手のコーチ)からの誘いを当初は固辞していましたが、2018年、15年ぶりに再開。復帰当初は激しい稽古に骨折や脱臼もしましたが、徐々に勘を取り戻し、同年、国内大会で初優勝し、国際大会でも実績を積んでいます。
強いメンタルを活かし旧友コーチとめざす金メダル
課題のフィジカル面を強化するため、筋力トレーニングを重点的に行い、体重増加に取り組んでいます。「自分を変えたい」とメンタルの強さを活かして有言実行で代表の座をつかみました。日本視覚障害者柔道連盟強化コーチとなった仲元歩美さんは「手足が長く、技に切れがあった。世界レベルで通用する」と評価しています。2018年のアジアパラで3位、2019年ワールドカップも3位に。東京大会はパラリンピック初出場です。「仲元コーチと喜びを共有したい」と金メダル獲得を狙っています。
競技へのメッセージ
「柔よく剛を制す」柔道競技は、日本のお家芸です。残り数秒でも大逆転の一本チャンスがあります。観戦している側も、試合終了の合図までハラハラドキドキできることは間違いありません。
連合東京 三多摩ブロック地協
2019年の国際大会でも銀メダルを獲得し、東京大会でも活躍を期待しています。コロナ禍にある世界中のモヤモヤを投げ飛ばして、金メダルをめざせ!
競技名
パワーリフティング
4年間の成果をぶつける緊迫の3秒間
競技概要
下肢障がいの選手によるベンチプレス。障がいの程度によるクラス分けはなく、体重別で男女10階級に分かれています。選手はベンチに横たわり、ベンチ上に脚を伸ばしたままバーベルを上げます。ラックから外したバーベルを審判の合図で胸まで下ろし、再び上げます。この1回3秒程度で審判3人が判定。白旗が2本以上で成功、赤旗2本以上で失敗です。
競技の魅力:緊張と静寂の後、白旗が上がれば割れんばかりの歓声
仰向けに寝たまま上半身だけの力で、体重の2倍以上のバーベルを持ち上げる姿は圧巻です。試技のわずか3秒程度という短い一瞬に4年間の成果をぶつける選手たちからは目が離せません。試技が始まると会場は緊張と静寂に包まれます。成功判定が出た瞬間、選手や間近で支えるコーチが喜びを爆発させ、観客も割れんばかりの歓声をあげる、とてもエキサイティングな雰囲気のスポーツです。また、上半身のパワー世界ナンバー1を決める競技で、鍛え上げられた肉体が見られることも魅力です。
イチオシの日本人選手
山本
恵理
さん
所属:日本財団パラリンピック
サポートセンター 階級:女子55㎏級
水泳やホッケーも経験し、5年前に競技デビュー
先天性の二分脊椎症で足が生まれつき不自由です。9歳で水泳を始め、パラ水泳の近畿大会や日本選手権などに出場しています。留学先のカナダでパラアイスホッケーに出会い、カナダの代表選手らとプレーしました。2016年に東京都主催の体験プログラムでパワーリフティングを体験し、選手として東京大会をめざすことを決意し、国内外の試合に出ています。
運営と選手の両面を熟知、爆発力とスピードが強み
大学院で障がい者スポーツを学び、東京大会関連の仕事をするため、32歳でカナダから帰国。2015年から日本財団パラリンピックサポートセンターの職員です。「パワーリフティングを(パラ選手として)やる人生とやらない人生、どっちがおもしろいだろう」と考えた末に選手となり、運営側とプレーする側の両面を熟知しています。「ゾーン」に入った爆発力とバーベルを上げるスピードが強み。練習でも集中して、重りの重量に左右されないスピード感のある拳上を得意としています。
競技へのメッセージ
男女別、階級別の純粋な力比べで、自己ベストに挑む姿にとても心を動かされます。スピーディーな進行、シンプルなルール、緊張・静寂からの緩和、歓喜の雰囲気など、競技経験のない人にもわかりやすく、一瞬にかけるパラアスリートの迫力の試技をその目に焼き付けてください。出場選手の皆さんの4年間の努力が花咲くことを祈っています。
JAM東京千葉
「心・技・体が一体になった時、事前にイメージした通りに試技が運んだ時が一番楽しい」と語る山本選手。筋力、瞬発力、精神力が試される一瞬に力を発揮する姿を応援できるのを楽しみにしています!
競技名
ボート
2,000mのコースを一直線
競技概要
肢体不自由と視覚障がいの競技です。直線コースをスタートの合図で漕ぎ出し、ボート先端がゴールラインを通過した速さで勝敗を決定。1人乗り「シングルスカル(PR1)」(体幹が使えず、腕と肩のみで漕ぐ)、2人乗り「ダブルスカル(PR2)」(胴体と腕・肩を使って漕ぐ)、5人乗り4人漕ぎ「舵手つきフォア(PR3)」(脚と胴体、腕・肩を使って漕ぐ)の3種目です。
競技の魅力:技が光る個人戦とコンビネーションが重要なチーム戦
シングルスカルは個人技や身体能力の競い合いが魅力です。体幹が使えないため、バランスがとりやすいようにボートの両脇に補助用の浮きがついています。オールを2人の選手が1本ずつ持つダブルスカルと、男女2名ずつの漕ぎ手に舵取り役のコックスが同乗する舵手つきフォアはチームのコンビネーションに左右されます。呼吸や漕ぐスピードでタイミングをそろえることが重要で、身体障がいと視覚障がいという異なる障がいの組み合わせによる息の合ったチームワークが見どころです。
イチオシの日本人選手
有安
諒平
さん
所属:東急イ—ライフデザイン/
杏林大学医学研究科
種目名:PR3 Mix4
柔道からボートに転向して急成長
15歳で「黄斑ジストロフィー」と診断され、大学の同期だった半谷静香選手との出会いをきっかけに、20歳で視覚障がい者柔道を始めました。もともと柔道でパラリンピックをめざしていましたが、代表になれず、伸び悩んでいた頃、東京都主催のパラアスリート発掘イベントに参加。協会の反応が1番よかったボート競技に転向します。2018年、ブルガリアで開催された世界選手権で4位入賞。2019年に日本ボート協会指定強化選手となりました。
研究、仕事、競技と前向きに挑戦
「こつこつトレーニングしてタイムを競うスポーツが性格的に合っている」との自負から、陸上や自転車も体験したうえでボートをやろうと選んだそうです。2020年度「東京アスリート認定選手」。2020年10月に韓国で開催されたアジア選手権のPR3クラス(混合舵手つきフォア)で準優勝。理学療法士として働きながら大学院で研究を続け、「大学院、医療現場での仕事、競技生活も含めて、どの分野でも力が発揮できるような状況をつくりたい」と語る有安選手。とにかく前向きで、常に挑戦し続けている印象です。
競技へのメッセージ
レースの距離が前回のリオ大会までの1,000mから、2017年以降は2,000mに延長され、今大会はこれまでの強豪国にどのような影響が出てくるのか楽しみです。選手の皆さん、フィニッシュラインをめざして一直線に水上を滑りあげてください。
損保労連東京
「チャレンジする」「挑戦する」ことをマイルールとする有安選手の姿は多くの人に感動を与えます。ぜひ金メダルをめざしてがんばってください。応援しています!
競技名
射撃
鍛え抜かれた技と心が織りなす緊張感と劇的な試合展開
競技概要
ピストルとライフルの2種類の銃で、それぞれ火薬使用または空気銃(エアライフル)があり、規定の弾数の得点を競います。1976年のトロント大会から正式競技として採用されました。立って撃つ「立射(りっしゃ)」、うつ伏せで撃つ「伏射(ふくしゃ)」、片膝を立てて撃つ「膝射(しっしゃ)」と撃ち方は3パターン。1発の満点は10.9点です。
競技の魅力:わずか0.5mmに命中させる卓越した技術と集中力
射距離10mのエアライフルでは、的の中心直径0.5mmの範囲に命中させなければなりません。中心からのわずかなずれで順位が大きく入れ替わるため、ひとつのミスが勝敗を分けます。中心への命中率を高めるためには卓越した技術はもちろん、極めて高い集中力が必要です。予選の上位8名で行われる決勝で、メダルを決める最後の1発は観客の拍手と歓声の中で放たれます。鍛え抜かれた選手たちの技と心が織りなす緊張感と劇的な試合展開が最大の見どころです。
イチオシの日本人選手
水田
光夏
さん
所属:白寿生科学研究所
種目:10mエアライフル伏射(SH1)
未知への挑戦で射撃選手の内定第1号に
中2で難病のシャルコー・マリー・トゥース病と診断され、右肘から先、左手の指先と両ひざから先の感覚がまひ。右手の肘から先はほとんど感覚がなく、力が入る左手も握力はわずか4.5kg。クラシックバレエとスキーの経験から、未知のスポーツをやってみようと考え、17歳でビームライフル、その約2年後にエアライフルを開始。2017年の全日本障害者ライフル射撃競技選手権でデビューし、2019年の世界選手権で東京パラリンピックの出場権を獲得。射撃の内定選手第1号です。
鋭い眼光の勝負師であり期待の新星
「ハンディを強みへ」「体の動かない部分が多いことが安定した体勢を保つメリット」とポジティブに考えています。常に自己ベストを0.1点でも超えることが目標だそうです。本格的な競技開始から3年で代表に内定し、日本のパラ射撃界にとって期待の新星。一見愛らしい普通の女の子ですが、競技では眼光が変貌し、ただ1点を見つめる勝負師に。自分と向き合う射撃で、体のどこに力を入れ、心拍数がどう変化したか、今の自分の精神状態がどうかなど、小さな変化を見極める作業をしています。
競技へのメッセージ
銃を撃つ迫力と、1mm以下の的を狙う選手の研ぎ澄まされた精神力、そして一進一退の攻防を繰り広げる試合展開の迫力は、ライブならではの魅力です。この機会に、ぜひパラ射撃を観戦して、国内外の選手の活躍を応援しましょう!
私鉄東京連絡会
トレードマークのピンクの射撃用ジャケットにツインテールの外見と、勝負強さのギャップが魅力。自分と世界に向き合い、メダル獲得をめざし、多くの感動を届けてください。頑張れ ニッポン!頑張れ 水田選手!
競技名
シッティングバレーボール
座ったまま、スピード感と臨場感たっぷり
競技概要
床に臀部(でんぶ)の一部が常に触れるよう、座って行います。健常者のバレーボールよりもネットの高さを低くし、狭いコートで攻防が繰り広げられます。立ち上がる、飛び跳ねるのは反則。スパイクやブロック時に臀部(=肩から臀部までの部位)を浮かさないなどの独自ルールがあります。1980年、オランダのアーネム大会でパラリンピックの正式種目に。
競技の魅力:選手と観客の距離も近く、ケガした健常者にも普及
スピード感と技術は普通のバレーボールと全く変わらず、普通のバレーボールより選手同士、選手と観客の距離が近く、より臨場感があると感じました。スピーディーで激しい展開、床面ギリギリで拾い続ける守備と白熱した試合展開が期待されます。日本は2015年の国際大会で女子が優勝、2016年アジア大会で男女優勝。国内では現在、ひざなどをケガした健常者も楽しめるスポーツとして、普及が進んでいます。健常者のみでのチーム結成も可能ですが、日本選手権への参加は障がい者1名以上の在籍が条件です。
イチオシの日本人選手
小方
心緒吏
さん
所属:北区役所(組合員)
バレー強豪校からの転向、負けず嫌いでエースに成長
もともとバレーボールの強豪校で活躍していましたが、15歳のときに右大腿骨肉腫で人工関節を膝に入れます。入院中にシッティングバレーボールを知り、母の熱心な誘いに根負けして練習に。動くだけでも難しく、思うようにプレーできず、「悔しくて、できるまでやろうと思った」と負けず嫌いの性格に火が付きます。2008年北京大会でパラリンピックに初出場し、バレーボールの経験と持ち前のパワーを活かしてエースに成長しました。
得点力が強みのママさん選手
2012年ロンドン大会の前年に結婚し、現在は子ども2人のママさん選手。一時は本格的な競技から距離を置くも、「東京大会に出たい」と2016年に復帰しました。強みは「チーム1」と自負する得点力を支える力強いスパイクに精度の高いフェイント。東京でのメダル獲得が目標です。区役所に勤務しつつ月2回、土日に行われる代表合宿に参加し、家族の支えで多忙な毎日を乗りきっています。試合前のリラックス方法はゲームや読書。靴下とシューズを左足から履くジンクスを子どもの頃から続けているそうです。
競技へのメッセージ
小方選手や坂本はるみ選手(中野区職員労働組合)らが自治労東京の組合員だったことが今回、紹介を書くきっかけになりました。下手に書けない!と、日本パラバレーボール協会所属コーチの竹田賢仁さん(自治労東京 港区職員労働組合所属)に学び、精いっぱい応援しています!
自治労東京
座ったままの体勢で動き回るため、ひざに負担がかかり、壊れる頻度は15年に一度といわれる人工関節をもう2度も作り直しているそうです。自治労の組合員でもある日本のエースを応援しています!
競技名
水泳
日本のメダル獲得や世界新記録ラッシュに期待
競技概要
パラ水泳は第1回パラリンピックローマ大会(1960年)から行われている競技です。選手は障がいの種類や程度、運動機能などにより、できるだけ条件を揃えて公平になるようにクラス分けされて競います。全身を駆使して独自のスタイルで泳ぎ、その個性豊かなフォームは「残されたものを最大限に活かす」パラリンピックの精神を強く体現しています。
競技の魅力:弾力性のある日本製タッピングは海外も注目
視覚障がいクラスで欠かせないのが、見えない選手に壁を知らせる「タッピング」です。全盲クラス(S11)はターンのタイミングが掴めず、安全確保のために義務づけられています。壁が近づいたらコーチがタッピングバーで選手の身体をポンっと叩いて合図し、選手はその合図をもとにターンします。実は「タッピングバー」に関する公式ルールはなく、日本は弾力性のある釣竿を改良した手作りタッピングバーを使用しており、その完成度の高さから、海外チームからも問い合わせがあるそうです。
イチオシの日本人選手
木村
敬一
さん
所属:東京ガス
クラス:S11、SB11、SM11
パラリンピック3大会連続出場の日本のエース
1990年滋賀県生まれ。2歳で先天性疾患から全盲になり、小学生から筑波大付属盲学校(現・筑波大学付属視覚特別支援学校)に所属して水泳を始めました。パラリンピックに2008年北京大会に初出場。2012年ロンドン大会で銀・銅メダル各1個、2016年リオ大会では銀・銅メダル各2個を獲得しています。2019年の世界選手権100mバタフライで優勝するなど、数々の世界大会で優秀な成績を残し、国内外から大きな期待が集まる日本パラ水泳のエースです。
気力と根性でつらい練習も真剣に
2018年からアメリカに拠点を移し、練習に励んでいます。日本に帰国すると休日に映画鑑賞することもあるそうです。アニメ『名探偵コナン』が大好きで、シンガポール大会(ワールドシリーズ)で宿泊したホテルが映画『紺青の拳(フィスト)』の舞台だったマリーナベイ・サンズで大喜びだったというお茶目な一面も。強みはパワーによる押しとスタートダッシュ。つらい練習も力を抜かず何事も真剣に取り組んでいて、今自分ができることをやり抜く気力と根性があります。
競技へのメッセージ
水泳は陸上競技に続いて出場選手が多く、日本がパラリンピックでメダルを量産してきた競技です。競技レベルの向上が著しく、世界新記録のラッシュも期待されています。努力を続けた選手の皆さんが持てる力をすべて出し切り、1秒でも早く泳ぎきってもらいたいです。応援しています!
全国ガス東京
木村選手の頑張りが多くの選手を勇気づけると思います。そして多くのメダルを勝ち取り、応援している世界の人に勇気と希望を与えてほしいです。これまでの努力は必ず報われると信じて、頑張れ!さらにNTTドコモの組合員である山田拓朗選手も出場します。メダルラッシュに期待しています!
競技名
卓球
高度なラケットワーク・ラリーに注目
競技概要
健常者とほぼ同じルールで1ゲームは11点先取、3ゲームを取った選手が勝者となり、卓球台やネットの高さ、ラケットなどの用具も同じです。ただハンデを補うため、車いすや義足、杖などを使えます。男女別に障がいの種類や程度のクラス別で、個人戦と団体戦の2種目。個人戦は男子11クラス、女子10クラス、団体戦は男子5クラス、女子3クラスです。
競技の魅力:揺さぶり、スピーディー、多彩なプレースタイル
見どころは多種多様なプレースタイル。車いすの選手は、車いすで左右に大きく移動することが難しいため、台の近くでプレーし、相手を前後左右に揺さぶるテクニックに優れた選手が多いです。立位の選手はクラスによってプレースタイルが大きく変わります。障がいの軽いクラスでは健常者のようなスピード感のあるラリーが見られます。一方、障がいの重いクラスの選手は下肢だけでなく、ラケットを持つ手にも障がいがある場合もあり、それぞれの状態に合わせたプレースタイルを形成しています。
イチオシの日本人選手
櫨山
七菜子
さん
所属:マルイキットセンター
2019年国際大会で個人8位、団体銀メダル
さいたま市出身の櫨山七菜子選手。日本知的障がい者卓球連盟に所属しています。ドバイ2017アジアユースパラ競技大会 女子シングルスでは銅メダルを獲得。2018アジアパラリンピックでは日本代表に選ばれました。2019パラジャパンオープン東京大会 女子シングルスではベスト8に入賞、団体戦では準優勝しています。2020年12月のジャパンチャンピオンシップではシングルス初優勝の山口美也選手を相手に、フルゲームの接戦を繰り広げました。
努力家の頑張り屋さん、メダル獲得に向けて挑戦
夢を叶えるには「目標をもってひたすら努力すること」と話す、努力家で非常に頑張り屋さんです。座右の銘は「楽しんだもの勝ち」。兄の影響で始めた卓球ですが、高速ラリーが続くのが楽しく、競技を通じて友人関係も広がりました。リフレッシュはももいろクローバーZのライブ映像を見ること。ドバイ2017アジアユースパラ競技大会では、2016年リオ大会で銅メダリストの香港の強豪選手にストレート勝ちして3位に。東京大会も「最後まで諦めずにチャレンジします!」と心強い抱負を語っています。
競技へのメッセージ
パラ卓球は、一般の卓球とルールや使用する用具などはほとんど同じですが、障がいを持つ選手がプレーしやすいようにいくつかの特別なルールが設けられています。パラ卓球には、健常者の試合にも劣らないスピードのあるラリーや独特の戦術性など多くの魅力があります。ぜひ観戦して、応援してみてはいかがでしょうか。
運輸労連東京
最後まで諦めずに頑張ってください!
競技名
テコンドー
華麗な迫力満点の蹴りで勝負
競技概要
韓国生まれで「跆拳道」とも表記され、「跆」は跳ぶ・蹴る足技、「拳」は突く・叩く手技、そして「道」は武道の意味です。基本は健常者のテコンドーと同じですが、攻撃は「蹴り」のみで、パンチは無効。キョルギ(組手)とプムセ(型)の2種目をK41~44の4つのクラスで体重別3階級に分け、東京大会は最も障がいの程度が軽いK44のみ(男女3階級)。
競技の魅力:海外選手に対抗したアクロバティックな技も
パラテコンドーは2006年に誕生し、東京大会から正式種目となったばかり。1ラウンド2分、計3ラウンド。ノックダウン制の空手と異なり、技の種類によるポイント数で勝負し、正確かつスピーディーに有効な部位に当てることが勝利の近道です。上肢障がい者対象のパラテコンドーは「蹴り」のみで戦います。オリンピック以上の華麗な蹴りの応酬や迫力満点の足技が魅力です。日本人選手は足の長い海外選手に対抗するため、かいくぐっての回し蹴りや飛び蹴りなど、アクロバティックな動きにも注目です。
イチオシの日本人選手
工藤
俊介
さん
所属:ダイテックス/大東文化大
種目:K44 75kg級
2018年に競技開始、同年国際大会で1位に
1993年岐阜県生まれ。社会人1年目の23歳のときに仕事中の事故で左上腕を切断。2018年にパラテコンドーを始めます。普段は週3日出勤し、週6回大学で練習に励み、同年にアメリカやブルガリアで行われた国際大会で3位、韓国の大会でなんと1位に。2019年トルコで行われた世界選手権の男子75kg級で銅メダルを獲得しています。2020年1月の東京大会の代表選手最終選考会で75kg級の勝者となり日本代表に内定しました。
健常者相手に週6日練習する日本のエース
競技を始めてまだ3年ですが、剣道、テニス、バドミントンなど学生時代の経験を活かし、世界選手権で銅メダル経歴を持ち、全日本選手権も2018年、2019年と連覇しています。その裏には強豪校の大東文化大テコンドー部で健常者を相手に週6回練習するなど、人一倍の努力をされてきたことがあります。「すさまじい威力で蹴られて、毎回すごい苦しい」と悪戦苦闘しながら成長。得意技は前足で距離をとり、チャンスで相手に近づいて蹴る、前足を使った技だそうで、試合で観られるのを楽しみにしています。
競技へのメッセージ
「足技のボクシング」ともいわれるテコンドーは1200種類の足技があり、競技人口は全世界で206か国、約7,000万人、日本で約1.5万人(2016年時点)、パラテコンドーは全世界では約300人、日本で約20人と少ないものの今回パラリンピック採用で注目が集まっているそうです。上背やリーチ、パワーに優れる海外選手に負けずに、日本人選手の技術やスピードを活かした試合から目が離せません!
フード連合東京
海外選手にも負けない180cmの長身を活かした力強い蹴りとスピードを武器に「金メダル獲得でお世話になった方たちに恩返しをする」との意気込みも頼もしいです。ぜひパラリンピックの初代金メダリストになってください!
競技名
トライアスロン
総合力とチームプレーに注目!
競技概要
前回リオ大会からの採用競技です。車いす、立位、視覚障がいのカテゴリーがあり、1人でスイム(0.75km)、バイク(20km)、ラン(5km)を連続で行います。スイム、バイク、ランの合計タイム勝負はオリンピックと同じですが、距離はオリンピックの半分です。両足に障がいのある選手はバイクをハンドサイクルで手漕ぎし、ランでは競技用車いすを使います。
競技の魅力:ガイドはオリンピアンのサポートも
視覚障がいクラスには同性のガイドランナーがつき、車いすクラスではハンドラーというスタッフがウエアの着脱や乗り換えを行う「トランジション」も種目移行に影響します。サポート役として多くの健常者が参加し、視覚障がいのPTVIクラスでは視覚に障がいのない「ガイド」がともにロープを持って走り、バイク(自転車)では2人乗りのタンデム自転車で走ります。ガイドは全パートを選手と一緒にこなすので、高い競技力や判断力が求められます。オリンピックのメダリストが、パラリンピックでガイドを務めることもあり、「ガイド」にも注目です。
イチオシの日本人選手
土田
和歌子
さん
所属:八千代工業
日本人初の夏冬五輪の頂点に、計7つのメダルを獲得
高校2年生のときに交通事故に遭い、車いす生活になりました。1994年リレハンメル大会のアイススレッジスピードレースでパラリンピックに初出場します。1998年長野大会のアイススレッジ、2004年アテネ大会の陸上で金メダルを獲得し、日本人として初めて夏冬両方の金メダリストになりました。これまでに夏冬で7つのメダルを獲得しましたが、2018年にトライアスロンに転向し、パラリンピックでのこの競技は初挑戦となります。
世界のパラスポ舞台で大活躍のママさんアスリート
陸上競技を始めてから2000年シドニー大会以降の夏季4大会に連続出場。2013年大分国際車いすマラソンではT54クラスの当時のフルマラソン世界記録を更新し、素晴らしい実績を積んできました。2005年に結婚、翌年長男を出産したママさんアスリートです。夏冬パラリンピックで金メダルを含む多くのメダルを獲得し、新たな種目にも果敢にチャレンジする姿は見る者を熱くします。「アクシデントがあっても、気持ちの切り替えがはやく、立ち止まらずに次の目標に向かっていける」のを強みと自負しています。
競技へのメッセージ
選手だけでなく、健常者とともにレースをつくり上げる魅力がある競技がパラトライアスロンです。スイム、バイク、ランの総合力を試され、順位の変動も激しくなるでしょう。メダルを期待されている日本人選手も多く、パラトライアスロンから目が離せません! 東京の海を全力で泳ぎ、東京の街を颯爽と走る姿をぜひみんなで応援しましょう!
サービス連合東日本地連
アイススレッジ、陸上に続き、パラリンピック3競技目の金メダルをめざし、東京の舞台で全力を出し切ってください!金メダルを獲得して、日本に明るい話題を提供してくださると期待しています!
競技名
車いすバスケットボール
ぶつかり合う激しさ、パスのスピード感で大迫力
競技概要
下肢などに障がいのある選手が競技用車いすを巧みに操作しながらプレーします。使用するコートやリングの高さなどは健常者のバスケットボールと同じで、車いす同士の激しい攻防やスピーディーなパスワークが魅力です。1960年、初のパラリンピックとなるローマ大会から実施され、現在でも最も人気のある競技のひとつとなっています。
競技の魅力:チーム内の持ち点制限で重度の選手にもチャンスあり
「ダブルドリブルはなし」「ボールを持った状態で車いすを3回漕ぐとトラベリングになる」などの特徴的なルールがあります。スポーツ好きで健常者のバスケットボールを知っているならルールを覚えるのも難しくなく、観戦しやすいでしょう。選手にはそれぞれ障がいのレベルに応じて持ち点が与えられ、重度の障がいの1.0点から軽度の障がいの4.5点まで、0.5刻みに分けられ、プレーする5人の合計点は14点以内と決められています。障がいの重い選手も活躍できるシステムです。
イチオシの日本人選手
鳥海
連志
さん
所属:パラ神奈川SC/WOWWOW
中学生で国際大会2位獲得に貢献、チーム最年少でリオ大会出場も
生まれつき両手足に障がいがあり、両下肢を3歳で切断。中学1年生だった2011年、佐世保WBCで車いすバスケットボールを始めます。2013年にはアジアユースパラゲームスに出場し、2位獲得に貢献しました。2015年、三菱電機2015IWBFアジアオセアニアチャンピオンシップ千葉で存在感を発揮し、その後は日本代表に定着。長崎県立大崎高在学中の2016年、チーム最年少選手としてリオパラリンピックに出場。翌年、神奈川のクラブチームに移籍しました。
「やればできる」まっすぐな目の好青年
日本代表の未来を背負う若きスピードスターです。障がいによって決まる持ち点は2.0。最重度から2番目の低さですが、過去の取材で「やればできると思っている、何でも」「自分で限界を決めない」とコメントされ、視線がまっすぐな好青年で、すごく好感をもちました。負けず嫌いで、できない悔しさから成長を重ねつつも、リオ大会で9位の壁にぶつかり、一時は引退も考えたとか。神奈川や日本代表でのプレーを通じてチームへの貢献意識を高める、一方で勝つことより楽しさを土台に一層の成長をめざしています。
競技へのメッセージ
戦略に基づいたチームの役割分担が重要で、勢い余って転倒する選手がいるほど激しいプレーとパスワークによる想像以上のスピード感は見ていて迫力があり、車いすバスケットボールが大好きです。チームの力を結集し、金メダルめざして頑張れ日本!!
JP労組東京
「東京大会の後は海外リーグで活躍する同世代の選手たちと一緒にプレーしたい」と既に先を見据えて高い目標を掲げています。「世界最強プレーヤー」をめざして、これからも頑張ってください!
競技名
車いすフェンシング
腕の長さで距離を調整、剣さばきがカギ
競技概要
車いすを固定し、競技者の腕の長さに応じて対戦者間の距離を調節し、上半身で戦います。1960年ローマ大会からの正式種目。かけ引きと剣さばきの技術、スピード感が魅力です。ユニフォームや剣、マスクなどの装具もルールも健常者の競技に準じており。胴体のみを突く「フルーレ」、上半身を突く「エペ」、上半身を突き、斬る「サーブル」の3種目。
競技の魅力:求められる集中力と精神力、数分間で汗びっしょりに
お互いの剣が肘に届く距離間で対戦するため、相手との距離が近く、気が抜けません。突く・切る攻撃も、たたく・払う防御も、巧みな剣さばきがカギになります。勝負はスピーディーで、高い集中力や精神力が求められる過酷さもあり、数分間で競技者が汗びっしょりになるほどの激しさです。独自のルールで動ける範囲やフルーレ、エペ、サーブルの各種目で有効となる範囲が異なり、エペでは、下半身への突きが得点にならないので、センサーが反応しないようにスカートを着用して試合を行います。
イチオシの日本人選手
安
直樹
さん
所属:東京メトロ(組合員)
種目:カテゴリーA
独特の世界に魅了され、バスケからフェンシングへ転向
もともと車いすバスケの選手としてジュニア時代から活躍。2007年から3シーズン、イタリアリーグで日本人初のプロパラアスリートとなりましたが、限界を感じる年齢に。東京大会の開催決定で「アスリートとして、まだやれる、まだ負けたくない」という強いモチベーションから、慣れ親しんだ競技を離れて車いすフェンシングへ転向。瞬時の駆け引きが勝負を決める独特の世界観に魅了され、パラリンピック出場をめざす一大決心をしたそうです。
同世代の現役レジェンド選手
中学生のときに左脚の股関節に病気を発症し、手術ミスで後遺症が残りました。家族の勧めで始めた車いすバスケ。2004年アテネ大会にも出場し、20年以上注ぎ込んできた世界から離れた後、「選手として再びパラリンピックに出たい」と、1年以上かけていろいろな競技に挑戦。2015年に車いすフェンシングの道を選びました。お会いして経験談をお聞きした印象は「ミスターストイック」。2018年ワールドカップで3位を獲得し、2019年日本選手権では3連覇を果たしています。
競技へのメッセージ
一瞬の駆け引きで勝負が決まるフェンシング、これこそ武士道精神=サムライスピリッツのスポーツ!! 巧みな剣さばきに加え、実は剣を持たない方の腕は車いすのアームレストをつかんで体を支え、剣さばきの助けにもなり、かなり鍛え上げられています。東京パラリンピックを通じて、新たなレジェンドが誕生することを願っています。
連合東京
私自身より2歳年上のアスリートとして、今も世界を舞台に勝負の第一線で戦っている安選手。パラリンピックに向けてベストを尽くし、レジェンドとして栄光をつかむ日を待ち望んでいます。
競技名
車いすラグビー
殺人球技とまで呼ばれる格闘技さながらの迫力
競技概要
車いす同士をぶつけ合いタックルする唯一のパラリンピック競技。1ピリオド8分間を4回行い、第4ピリオド終了時点での同点は、延長戦3分間で勝敗を決めます。男女混合で1チーム最大12名編成、重度0.5〜軽度3.5の障がいに応じたポイントを付与し、出場者4名が合計8点以内となるようにチーム編成します。選手交代に回数制限はありません。
競技の魅力:巧みな車いす操作とボールのない場所でのせめぎ合いにも注目
やはり魅力はマーダーボール(Murderball=殺人球技)ともいわれるぶつかり合いではないでしょうか。その激しさは障がいがあるとは信じられないほど。ぶつかり合う姿は観客を圧倒します。観客にも会場にもその衝撃音がガンガン響く、ある意味、格闘技のような迫力です。2000年シドニー大会から正式競技に。丸い専用球を使い、巧みな車いす操作でゴールを狙い、ローポインターと呼ばれる重度の障がいの選手が相手の車いすをひっかけて進行を止めるなど、ボールがないところでのせめぎ合いも見どころです。
イチオシの日本人選手
池
透暢
さん
所属:日興アセットマネジメント/
Freedom クラス:3.0
事故死した友人と「生きた証」を残すと決意、2018年世界一に
1980年生まれ、高知県出身。19歳で友人と交通事故に遭い、全身の7割以上にやけどを負い、左足を切断します。地獄のような痛みに苦しむ中、友人3人の死を知り、「死んだ方がマシ」と考えた自分を恥じて、友人の分も含めて「生きた証」を残すと決意。23歳で車いすバスケを始め、日本代表候補にもなりましたが、32歳のときに車いすラグビーに転向。2016年リオ大会で銅メダル獲得に貢献。2018年世界選手権では金メダルを獲得しました。
日米での豊富な経験を土台に挑戦し続けるキャプテン
正確なパスと巧みな車いす操作が強み。34歳の2015年から日本代表のキャプテンです。世界選手権優勝後に渡米し、アメリカリーグで17位の未完成なチームに所属。仲間の可能性を引き出し、全米選手権でなんと5位に。信念は「思い通りにならないことの方が多いが、挑戦を恐れて一歩を踏み出せないことが一番もったいない。努力を重ねて得たものにこそ価値がある」と常に挑戦や努力を掲げ、「そこには決して一人では成し遂げられないたくさんの感謝がある」と真摯な姿勢も多くのファンを虜にしています。
競技へのメッセージ
競技の見どころの一つは迫力のあるぶつかり合いです。ゴールを競う中で格闘技のようにぶつかり合う姿は観客を圧倒し、興奮させる力があります。また2018年の世界選手権で優勝し、前回のリオ大会でも健闘した日本も、金メダル獲得を狙える位置にいると思います。世界トップレベルの試合が楽しみです。
電機連合東京
アメリカリーグで培ったリーダーシップを今度は日本のために存分に発揮し、自分のため、そして応援してくれる方々のために、最高のパフォーマンスを見せてほしいです! 頑張ってください!
競技名
車いすテニス
ラケットと車いすを駆使して強打を放つ
競技概要
コートの内外を問わず、2バウンドまでの返球が認められる以外はテニスと同じルールです。男女シングルス、ダブルスに加え、三肢まひ以上の重度障がいがある選手が対象の男女混合「クアード」のシングルスとダブルスがあります。クアードの選手は障がいの程度により、電動車いすの使用やラケットと手をテーピングで固定するなどが認められています。パラリンピックは3セットマッチで行われ、2セット先取した方が勝ちです。
競技の魅力:巧みな車いすさばきでボールに回り込むラリーに注目
相手のボールを追いかける俊敏さが必要ですが、車いすテニスは片手にラケットを持ちながらもう片方の手で車いすを漕ぎ、コート内を動き回らなければなりません。テニスのテクニックに加え、車いすの高度な操作(チェアワーク)も注目です。その中で、何と言ってもみどころはラリー。真横への移動ができない車いすを巧みにすばやく回転させ、ボールに回り込む姿は芸術的にさえ見えます。
イチオシの日本人選手
眞田
卓
さん
所属:凸版印刷(組合員)
職場の後押しでパラリンピアンに、世界で活躍
1985年栃木県那須塩原市出身。中学生時代はソフトテニス部で活躍。19歳のときにバイク事故で右脚を切断しました。20歳から5年ほど、車いすテニスを趣味でしていましたが、2012年ロンドン大会の1年半前、転職先の指示でパラリンピックに出る方法をまとめたレポートが企画提案書となり、本格的にパラリンピックをめざしてきました。ロンドン大会の結果はパラリンピック初出場ながらシングルスベスト16、男子ダブルスベスト8でした。
実力十分なパワーヒッター、実はシャイで人見知り
世界トップクラスのパワーショットで、ダイナミックなチェアワークも見どころです。勢い余ってプレー中に転倒することもしばしば。2016年リオ大会では準決勝に出場。2017年プラハカップ、2018年ダンロップ神戸オープンでは男子シングルス、男子ダブルスで1位に輝き、同年の車いすテニス世界国別選手権でもシングルス、ダブルスともに全勝。日本の優勝に貢献しました。遠征でさまざまな国の人との出会いを楽しむ一方で、シャイで人見知りだそうですが、はにかむ笑顔が親しみやすく、とても魅力的です。
競技へのメッセージ
競技用車いすはタイヤがハの字で軽いなど、その開発には膨大な時間と労力、予算が掛かります。共生社会実現のため、パラスポーツへの支援の輪が広がるよう願っています。車いすを迅速に操作しながら最高時速150km超の強打で相手の逆を突く! 頭脳とパワーが結集した世界レベルの神業をぜひその目で確かめてください!
印刷労連関東南部
3度目のパラリンピック出場でメダル獲得を期待しています。持ち味である「フォアハンドの強打!」を世界に見せつけてください!